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テッド君が不老なのは知っていたけれど、具体的に歳なんて考えたことなかったし、容姿や行動、性格もあんなんだから、ほんのちょっとだけ子供扱いしていた節があったとは思うんだ。ごめんね。でも、テッド君が150歳だって教えてもらって、ああ、それじゃあ何も遠慮することはないんだ。
と、思った。
本拠地船のサロンは、ちょうど宴会が始まったところだ。
どうしても任から離れられなかった面子を除いて、子供から大人までサロンに一堂が集結している。
広いサロンの中央にソファを集めて、テーブルを並べて、しかも、どこから用意したものやら、畳が敷かれている一角もある。
今夜はとことん飲み明かしてやるんだと、気合いが入った連中は、『テーブルと椅子』よりも、やっぱり畳であぐらをかいて飲むのが、粋な酔っぱらいだねえ、と、(単純に、酔ったら、その場でゴロンできるからだ)、初っぱなからスピードは全開、酒を次々と開けていく。つまみと酒が所狭しと置かれた座卓を囲む連中は、多分、ご想像通り。年齢層の高い、アダルトな雰囲気である。
山賊三兄妹の一人、弓の使い手ロウハクも、自分のグラスを左手に、一升瓶を右手に握って、酒盛りに賑わう野郎の間をうろうろしている。
どうやら、お目当ての相手が見つかったようだ。
「よう、テッド、飲んでるか?!」
畳の席の本当の隅っこで、烏龍茶を飲んでいたテッドの背中を、勢いよく一升瓶でどつく。
「今日ぐらいは、一杯付き合えよ!」
と、陽気に、酒の口を向ける。
テッドは別に酒が飲みたくて、この席に座っていたんじゃない。ただ、畳の方が、落ち着いてゆっくり座れるし、足も伸ばせるし、・・・つまりジイちゃんは畳が好きだから。
「・・・・・・お前、未成年だろ?」
テッドがしかめ面で、ロウハクに振り返る。
「イイって!イイって!」
ロウハクは、ニイッとにやける。
「群島諸国では18歳から、酒がOKだぜよ」
「・・・・・・何時からだよ」
と、テッドが不服そうに尋ねれば、
「大分前から、そうだぜ。テッド、知らねえの?」
ロウハクは、バカにするように、ふふんと鼻で笑う。
(・・・・・・い、何時の間に?!)
テッドは人を避け、霧の船に長い間居た故の、己れの浦島太郎ぶりに、軽くショックを受けつつ、因みに、ロウハクのついた真っ赤な嘘にすっかり騙されつつ、烏龍茶を飲み終えた。
待ってました、とロウハクが、空になったグラスに無断で酒を注ぐ。
「おーし。カンパイ!!」
チンと、グラスとグラスをかちあてて、ロウハクは気持ちよく、ぐいっと、酒を一気に飲んだ。テッドは、透明な酒がなみなみと注がれている、自分のグラスを前にして、固まってむっつりである。
そのグラスが目の前から、いきなり消えた。
隣のアルドが、テッドの手からグラスをひょいと抜き取った模様。
「テッド君はよしといた方がいいんじゃないかな?」
アルドはいつものように優しく微笑んだ。
「ちょっと待っててね」
「おっ、!」
自分がテッドに注いだはずの酒を、あっという間に奪われたロウハクは、非難しようにも呆気にとられる方が先だ。そんなロウハクに目もくれず、アルドは、『テーブルと椅子』の席の方、ナレオやラクジー達がほのぼのとしている、お子様席の方に歩いていき、ほどなく帰ってくる。
「はい」
と、テッドに手渡したのは、・・・一杯の牛乳だった。
テッドは。
牛乳がなみなみと注がれたグラスを凝視する。
ムカッとした。
隣に腰をおろしたアルドを、激しく横目で睨め付ける。じとりと。
(・・・150歳だって、この前言っただろうが!)
何食わぬ顔をして、アルドは代わりにと、テッドが飲んでいたグラスに口をつけている。
(ガキ扱いかよ!!!)
テッドは牛乳のグラスを飲むことなく座卓に置き、傍らにあった空のグラスを手にする。
そして、それをロウハクにつきだしたのだった。
「俺も飲む」
「あ、ああ」
詰め寄るようなテッドの剣幕に、ロウハクが思わずびっくりしたのは事実だ。妙な空気に戸惑いながらも、酒を注ぐ。が、半分くらい注いだところで、酒を注ぐのを止めた。
「まだ、飲める!」
「あ、ああ。でも、少しは水で割った方がいいんじゃないか?」
挑戦的なテッドの態度に、ロウハクは押され気味だ。
「酒に水を入れるのか!」
「これ、結構、度が強いし・・。それに、焼酎だぜ」
清酒と焼酎の区別もつかない。テッドは一気に真っ赤になった。
「じゃあ、お前、さっきのは何だったんだよ!」
そのまんま、俺にあんなに飲ませようとしたくせに!
ロウハクは、にぱりと笑って、誤魔化した。
(強い酒飲んで、ちょっと困った顔をしたテッドを、ちょっとだけ見たかった、なあんて言えねえよ・・・)
「テッド君、やめといたら?」
テッドのために焼酎水割りを用意するロウハクとで、テッドの両脇を挟んでいるアルドは、心配するように、テッドに声かける。
そして、アルドは割っていない、そのまんまの焼酎を再び、ちびりとやるのだった。
テッドは前を向いたまんま、両手で頬杖をつき、口をとがらせ、アルドを無視。
ロウハクが差し出した酒を受け取り、口元まで持ってきて、ぷんときたアルコールの強い匂いに、咄嗟にたじろぎ、それでも覚悟を決めて、おいやっ、酒を口に入れた。
口の中が熱くなる。
すっかり調子を狂わされたロウハクは頭をかいていた。一升瓶をもって、テッドの飲みっぷりを遠巻きに見守っている。つんつんと、ロウハクの背中をつつく人物が。
「ロウハク」
「姉ちゃん」
ロウハクはロウフォンの小声にならって、小さな声で返事をする。
「・・・・・・あのアルドって奴、のほほんとしといて、案外やるじゃないか」
何事かを悟りし顔で、目を細めるロウフォン。
「アンタもマダマダだねえ・・・・・・」
ロウハクは不思議そうに、首をひねる。
酒を飲んだテッドを初めて見た周りは、ここぞとばかりに酒を勧める。
テッドも注がれるままに、酒を飲む、が、もう何杯め?
我、得たり。
隣でアルドが、一瞬、ニヤリと笑みをこぼしたことに、テッドは気付いていただろうか。
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