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自分の部屋に戻るところだったテッドは、咄嗟に自分の部屋のドアに張り付く。
そうと、目だけ動かして、曲がった角の様子を伺ってみる。
気付かれてない。
廊下の先でアルドを囲んでいる、きゃぴきゃぴ三人組はお喋りに夢中だ。うきゃきゃ五月蝿い小娘どもの会話の中に、自分の名前が混じりこんでやがる!
「アルドさんは、なんで、いつもここにいるんですか?」
「お兄ちゃん、いつも握手を断られてるって、ほんとうー?!」
「テッドさんは、・・・テッドさんは、・・・・!」
会話の節々に次から次へと覆いかぶさってくる、ぴょんぴょん飛び跳ねる、やんややんやの邪魔だっ、笑い声。
(何、話してるんだ、今畜生!)
急に、しんとなった。
「アルドさんは、テッドさんのこと、どう思ってるんですか?!」
ついに、リタが核心をつく。
アルドは、いつものように、のほほんと答えた。
「僕はテッド君が好きだよ」
「ええー!!!」
(えええーーー!)
と、テッドの方は心の中で絶叫する。
「それは、どういう・・・?」
もじもじ、うつむきながら、ルナが尋ねるが、眼鏡の向こうの目は輝いている。ノアはいたずらっぽい、とっておきにカワイイ表情(と、本人は断言する)をして、楽しそうに言う。
「お兄ちゃん、テッドさんとお付き合いしたいの?!」
「え?」
場の空気が、一瞬にして、凍りつく。アルドは明らかに眉を顰めている。怪訝な顔で、三人に尋ね返す。
「・・・・・・テッド君は男の子でしょう・・・・・・?」
その顔はこう物語っている。
(君達、ナニ言ってるの?)
どうにも急に決まりが悪くなった、三人組は、おろおろ顔をつきあわせ、己が目等で語り合う。
(・・・・・・なんか、調子がおかしいですね)
(お兄ちゃんは、普通のお兄ちゃんだったのかな?!)
(なんだか、・・・・・・私達の方が変みたいじゃない?)
長身のアルドが押し黙ったまま、三人を見下ろしている。
「・・・・・・あ、あの、・・・・・・別に、私達、そういう事が、言いたかったんじゃなくってえ!」
しどろもどろに、三人は弁解を始める。
「・・・・・・すみません、・・・・・・そういうつもりではなかったんですけど・・・・・・」
「だって、お兄ちゃんって、ちょっと変わってるように見えるんだもん!」
すると、アルドはいきなり笑い声をたてて、
「何だか、君達、色々と勘違いしてたみたいだね!」
と、にっこりしてみせる。
「テッド君は心強い戦友だし、とても大切な友達だよ!」
(はあー、そうですか・・・・・・)
三人は、内心、ひどく期待を削がれ、表面では、営業スマイルを浮かべて、早く、三人で事の顛末を話し合ってみよう、と思う。
「それじゃあ、私達、失礼します!」
三人組が帰ろうとするので、テッドは、あたふたとドアノブを回す。
ギリギリセーフ。何とか、自分の部屋の中に滑り込む。ドアにあてた背中の向こうで、ばたばたばたと賑やかな足音。三人組が部屋の前を通り過ぎていく。
未だ灯りをつけていない、真っ暗な部屋の中で、テッドはドアに寄りかかったまま、立ち尽くす。
(・・・・・・そう、だよな・・・・・・)
今まで抱いていた懸念事項を思い出す。
そうか。アルドは自分を友達として見ていたのだ。それもそうだ。・・・・・・が、それも、困るが・・・・・・。
もしかしたら、と不安になっていた物思い。こんなとんでもなく可笑しい事に対して、真剣に悩んでいたのが恥ずかしい。
あれこれ考えて。あれやこれや心配して。
ドアにあてた背中が、ずるずると下に落ちていく。へなりと、その場に。
(なんだか、俺ってバカみたい)
テッドの部屋の前に、アルドが立っている。
ここに立つと、ちょうど壁にかかったランプに照らされ、長い影が伸びるんだ。
狩りの基本は、相手に警戒されないこと。
頭は隠せても、カワイイ尻尾はでていたよ。
(嘘も方便、ってね。テッド君)
END
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