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幻想水滸伝4 短編小説・目次



 真友情攻撃! 1
幻想水滸伝4 4主+スノウ

  
  彼は自分の犯した罪の重さを噛み締めるように言うのだ。
 「スノウ、ごめん。こんなことになってしまって」
 「・・・・・・。何言ってるんだ。誘ったのは僕の方だろう」
  ゆっくり顔を上げたスノウは、彼を見詰める。
 「でも。またたきの手鏡も、すりぬけの札も忘れた」
 「・・・・・・。それは大失敗だね」

 昼なお暗いオベル遺跡の広大なる迷宮の只中に、彼らは二人ぼっち。折りしも、よろいおおかみの襲撃を撃退したばかり。敵に見付からないよう、柱の影にひっそりと隠れて休憩中だ。
 今日、もう、どれくらい二人で戦ったか。数えるのも、しんどい。れっきとした迷子になってしまったおかげで、此処に来た第一の目標、『特訓』は、十分過ぎるぐらい叶えられている。
 相変わらず、ラクジーの道案内はアテにならなかった。ま、あんな幼気な少年を責め立てるのも可哀想というもんか。「地図を書いて」、といきなりの要求に、うんうんと悩みながら、「これで宜しいですか?」と恐る恐る、間違った地図をくれたもんだ。

 延々と同じ所を行ったり来たりしているのは、多分勘違いではない。妖しげな文様が刻まれた柱や床や壁。風景は一向に代わり映えせずに、天井からだらりと垂れ下がる無数のツタ。
「陽が沈む頃には、船に戻れるかなあ」
 と疲れた風に、ごちんことスノウが頭を壁にくっつける。
「・・・・・・やっぱり、忘れてしまったから」
 飽きもせず、再び詫びようとした彼に、待て、とスノウは右手を少し上げた。
「そんなの、しょうがないよ」
 オベル港に入港している本拠地船は、忘れ物に気付いた時、目と鼻の先にあった。が、必要なものを取りに戻るわけにはいかなかったのだ。
 未だ太陽も昇らぬ、夜明け前。こっそり二人は船を抜け出した。何故だか知らんがラクジーは、いつもの如く桟橋にて、彼らの出発を見送ってくれたけど。
 此処にこうして来ていること。それは、皆には内緒である。

「さ、休憩はお終い」
 スノウは颯爽と立ち上がる。連れの彼も、それに従い歩き始める。
「出口を見つけるのも大変なのに、こうモンスターと遭遇する機会も多いとね、」
 とぶつくさ言ってる側から、道の先に動く不審な物体を発見してしまう。
 108星を統べる天魁星たる彼は、すらりと双剣を抜き、構えた。 並び立つスノウも、己の名を冠した剣を握り見据える。
 前方の其れ。薄暗がりに。ぼわりと発光するオレンジが二つ。骸骨。人の骸に宿りし、魔の使いがゆらり。亡者の地に迷いし、生きとし生ける者よ。生命の気配を感知すると、それらは眠りから目覚める。骨がカタカタと小刻みに鳴る。徐々に激しくなり、動きは活発となる。敵を恐怖に陥れんとす。骨と骨とがかち合わさる不気味な気色悪い音が、辺りに響く。どこからか近付いて来る、馬のいななき。冥府より誘われし、死せる一角獣。煙りの如くに姿を現し、二体の骸骨についた。
 分かってるね。
 と、二人は目で合図する。先だって狙うは、ユニコーンゾンビ、二頭。

 双剣を前に突き出し、飛び出した。右、左。流れるような剣さばきで、筋張った硬い皮膚を切り裂く。続けて、スノウの会心の一撃。水の紋章片を宿した剣から、青い冷気がほどばしる。ヒヒンと最期の雄叫びを上げて、ユニコーンゾンビの体が崩れ落ちた。突如、目の前を陣取ったスケルトン。からくり糸に操られるように、足は動かない、滑るように移動してきた。大降りに、骨の剣を振り下ろす。双剣で受けたが、力で負けた。強い衝撃にぐっとこらえる間に、もう一方のスケルトンの剣がまともに入る。骨の刃は研がれていなくとも、鈍い痛みがはしる。残ったユニコーンゾンビが前足を高らかに上げた。口元に帯びる電気。ブウンと空気の摩擦音。ドンと叩きつけられる雷撃。直撃を受けた彼は、痺れを振り払うように、体を震わす。
 攻撃を受けなかったスノウは、相方の御返しとばかりに、それに斬りつける。ユニコーンゾンビの体から、腐った緑色の血が噴出す。スケルトン達は、雷撃がくすぶる彼に襲い掛かる。今度は、後ろに退いてかわした。次いで、骨の剣の軌跡を見切った彼は、双剣を上げ、思い切りバッテンに斬った。込められた渾身の力に、スケルトンはよろめき倒れる。そして、機に乗じて彼は駆け出し、ユニコーンゾンビに止めを刺した。
 骨をきしませて、威嚇を続けるスケルトン。倒したはずのスケルトンが、ふわりと苦もなく起き上がる。
「だから、スケルトンは厄介だね」
 スノウがぼやく。が、その言葉には、以前には無かった余裕が有る。
 二人は同時に飛び出し、各々のスケルトンに斬りかかる。
「はあ!」
 スノウの気合いの一閃と共に、振り下ろされた二人の剣は、スケルトンを打ちのめした。骨を繋ぎとめていた見えざる力は消滅し、カラカラと音をたて、バラバラになった骨が床に転がった。

 「なんだか、君ばかり狙われてる気がするんだけど」
 眉をしかめてスノウは、床に座り込んだ彼を見下ろす。戦闘終了後から、一心不乱に食べ続ける彼。
「そうかな」
 何食わぬ顔をして、彼はぱくりとイワシの頭にかぶりつく。もぐもぐもぐとしてから、背負ってきたザックの中に手を伸ばす。またもや取り出したるは、イワシ。無傷のスノウは、それを見て。
「君、イワシの焼き魚を幾つ持ってきたんだい?さっきからイワシばっか、食べてるじゃないか!」
 と、呆れた風に言う。
「タイもマグロも持ってきてるんだろ。今はお金もあるんだから、ケチケチすんなよ」
「うー」
 壁にもたれ掛かって彼は、言葉にならない返事をもらしてから。
「でも、未だ、それほど疲れてないし・・・・・・」
「船でも、一人でイワシばっか食べてるだろ」
 引き網でやたらとかかる、大量のイワシを消費するのは、大抵彼の仕事である。前々から気になっていたことを、スノウはここぞと指摘する。
「でも、イワシ、好きだから・・・・・・」
 香ばしい香りの漂うイワシを、次々に口に放り込む彼は、淡々として、ぜんぜん相手にしようとしない。
 スノウはしゃがんで彼のザックを漁ると、ぎゅうぎゅうにあんこが詰まった美味しそうなまんじゅうを彼に見せて、口をとがらす。
「じゃあ、まんじゅうは僕が全部食べちゃうよ」
 もごもごする彼の動きが、一旦止まる。
「・・・・・・。半分こにしない?」

 体力も回復してきたので、彼はもそもそとザックに物を閉まって、よいしょと立ち上がった。ぎょっとして、声を上げる。
「スノウ、何してるの!」
「これ以上、迷わないように、目印にしようと思ってさ」
 と、壁をつたうツタに、ブルーリボンを結びつけたスノウが普通に振り返る。
「それは止めなよ」
 彼はそそくさ、リボンを外す。
「なんでだい?ただのリボンだろ」
「ミレイから貸してもらってるもんだから」
「大体、これ女の子用だろ・・・・・・?なんで、僕がつける必要があるんだい」
 と、スノウは疑心の目を向ける。
「お守り。・・・・・・気合のでる・・・・・・」
 さりげなく、彼は言う。
「・・・・・・。ふうん・・・・・・」
 と、スノウ。せっせとブルーリボンを元通りにスノウに結わえつける彼を、黙って、そうさせる。

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