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幻想水滸伝4 短編小説・目次



 ハッピー ニュー イヤー

幻想水滸伝4 アルドとテッド


 神様に祈れる奴は、幸せだ。
 祈ったところで、何一つ変わらない、(・・・心の底から深く願っても・・・)、ことが分かっちまうと、年が明けたからといって、幸せな未来を期待する気なんて起きない。
 A Happy New Year!、だなんて。本物のガキの頃には、目をこすりながら、新しい年になる瞬間にワクワクしてたもんだが。今となっては、連続した日々が続くだけ。期待したって、素敵なことは起こらない。
 そんなの、もう遠い昔だ。
 Unhappy New Year・・・・・・。一人で迎える正月。
 暗い森の寝床で、遠くに鐘の音を聞き、年が明けたことを知る。人恋しくなり、賑やかな行列の群れに混じり込めば、あちらこちらに友人や恋人や家族による幸せな情景が、目や、心に痛い。お参りが済み彼らが着く家路と、この帰る家など無い、哀れな我が身の上。年越し、正月、耳を塞いで、早く過ぎ去ってしまえよ。
 明けましておめでとう?
 ふん、だ。言う気も起きなければ、・・・・・・言う相手もいなかった。

「だけど、今回の年越しは、とても楽しかったね!」
 アルドが横で笑い掛けると、
「・・・・・・まあな・・・・・・」
 と、テッドは、甲板の手すりに折った両肘でもたれ、合わせた手の上にあごを乗せたまま、曖昧に返事する。
「豪華な船上パーティーだったね。美味しい食事がいっぱい並んでさ。100人以上で流し蕎麦には、びっくりしたな。まぐろの刺身づくしも、美味しかったね。飲んで歌って、大騒ぎして。皆でカウントダウンをして。年が明けた瞬間、一気に花火が打ちあがった時には盛り上がったね。それからは、ぎゃ−ぎゃ−騒ぎまくって。僕は、あんな賑やかで滅茶苦茶な年越しは初めてだよ!」
 ちょっと顔が赤くなっているアルドは、興奮気味に話す。
 未だ、酒が抜けきれてないな、とテッドは横目でちらりと見て、思う。
 そして、二人の後方には、「ツワモノどもの夢の跡」がしっかり残されている。甲板にはごろごろ、夜をてっして飲みに飲んだイイ大人の皆様が、すっかり泥酔しきって、あられもない姿で寝っ転がっている。
 もうすぐ、日の出なんだけど。起こさなくても、・・・いいよな。
 何人かは、しっかり目を覚まして、寒さに身を震わせながら、初日の出を待っている。それぞれ、いつもつるんでいる面子で固まって、ぼちぼち面子ごとにお互いの距離を空けて、同じように東の空を眺めていた。

 今日のアルドは、いつもお喋りだが、もっとよく喋る。
「テッド君は、本当に、お年玉、もらわなくていいの?」
 オベルのおいちゃんは、どうやら、子供の皆ちゃまにお年玉をくれるという噂だ。
「何で、俺がもらうんだよ・・・・・・」
 テッドは不服そうに、眉をしかめる。
(とはいっても、150年後には、『すすんで』お年玉をもらうようになるのだが、これはまた別のお話)
「パーティーでさ。僕は、テッド君が、あんなに嬉しそうな顔をしていて、嬉しかったよ!」
 テッドはまた横目で、ちらっと見る。自分に向けられた、アルドの満面の笑顔が飛び込んでくる。慌てふためいてテッドは、視線を海に戻す。
(こいつの物言いは、ほんとにストレート過ぎるんだから!)
 何だか、顔が火照ってきた気がする。
(そんな笑顔を見せられたら、こっちが恥ずかしいじゃないか)
 でも、何で、俺は照れてるんだ?
 酔った、酔った!管を巻くのも、妙に気分が高揚してきた、こんなケッタイな物思いも、何もかんも、無理矢理、酒なんか飲まされたせいだ。
 こういう時は、話題を変えよう。

「けど、あいつは、何時になったら、エルイールを攻めるんだ?!年を越したってのに、一向に、終わらせようとしないじゃないか」
「オベルを奪還したからね。別に急ぐ理由は特にないんじゃないかな。・・・・・・いっそのこと、皆で、群島諸国の警備隊にでもなれたら、いいね」
「冗談」
 と、テッドは軽くいなす。
 そうしたら、ますます、この船から離れたくなくなる・・・・・・。
「・・・・・・しばらく、このままでいたいな」
 アルドは、雲が流れいく空を見上げて、つぶやく。
「だから、こうして一緒にいられるんだし」




END