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U]X 昔語 前編

 

「海の匂いがするわ」
 と、隣のエレノアが嬉々として声をあげた。
  彼女の後ろに座り手綱を握っていたドラゴンテイマーのティートは、ドラゴンを少し浮上させて、森の上にでる。
「わあ、綺麗な砂浜じゃない!」
  ティートも一緒になって、きゃっきゃっと声を上げ始める。
  彼女達が進む険しい崖の向こうに、白い砂浜が顔をのぞいている。 そして、青緑色の穏やかな海、雲の無い青空が美しい光景を描いている。
  エレノアと黄金の人魚の約束の場所は、ここから海岸線沿いにさらに北上した所にあるという。明日にはたどり着くだろう。

  二人の下、アルフォンスは、一人馬に乗り、山道を歩かせている。後方から、先頭を行く彼の所に、シウェンの馬が近づいてきた。
「シビュラ様が話があるそうだ」
  アルフォンスは彼の馬の足を遅くした。ただ木を切り開いただけの狭い山道を、彼は脇により、イナンナ、彼女の騎士達、ビーストテイマーとその連れを順番に前に通すと、しんがりのシビュラの元へ、彼女の横に馬をつけた。
「悪い知らせだ」
  と、シビュラ。
「数日前から、お前のご親友の姿がスカベッルムから消えているらしい。そして、同時期に、 ソレア海岸の神父が、スカベッルムのフェーリスの駐屯地で目撃されている」
  アルフォンスはソレア海岸を発つのと同時に、ソレア海岸の神父、ハーウェン神父を解放した。
「ラーヌンクルスの次はフェーリス。神父様は世俗の生き方をよく心得ていらっしゃる」
  シビュラが鼻を鳴らして馬鹿にする。
「あの神父が、例の場所を知っているとは思えないがな。しかし、全く心当りがないわけではないのだろう。鉢合わせになる可能性がある。肝に銘じておけ」
「レクトールにエレは渡さないよ」
  彼は、はっきりと彼女に告げた。彼女の不安を察していた。
「その言葉、忘れるなよ」
  彼女は素っ気無く受け応える。

  二人の馬は並んで歩く。
「先を急いだ方がいいかな。せめて、俺とエレだけでも・・・・・・」
  予定の遅れを懸念して、アルフォンスが提案した。
  昨日、やっと通過したアクウィラ火山では散散な目にあった。
  エレノアから約束の場所への近道との助言をうけて、また、スカベッルムに続く大通りを移動するのも目立つ恐れがあり、アクウィラ火山を越える寸法になったのだが。 今なお活動を続ける火山は、魔獣の住処になっていた。何度か
魔獣に遭遇し戦闘になった。退けるのにさほど苦労はしなかったが、時間を食ってしまったことは否めない。
  まあ、アクウィラ火山の魔力が生み出すと伝わる幻の槍、ヴォルケイトスを発見できて、お得な気分にはなったが。
「 いや、そこまで急ぐ必要もなかろう。・・・・・・それに、二人だけの時に襲われたら、守り切れるのか」
  シビュラが
言った。

  上空からティート達が、彼らの前にいるビーストテイマーに盛んに声を掛けている。上に来いと呼んでいるらしい。彼女達の執拗で強情な誘いに負けて、 ビーストテイマーの
ローウェルは渋々と、彼の乗るグリフォンを上昇させた。
「シビュラ。正直、意外だったよ」
  ティートと一緒にドラゴンの背に乗るエレノアの、彼女の楽しそうな笑顔を見上げながら、アルフォンスが言う。
「エレノアの同行を、貴女が認めるなんてさ」
「どうしてだ?」
  アルフォンスは笑いながら、

「足手まといはいらない、と言うかと」
「・・・・・・お前が私をどう見ているか、よく分かる台詞だな」
  シビュラがむっとした顔をしたので、アルフォンスは、
「そ、そういう訳じゃないよ」
  あわてふためく彼を、シビュラが遮った。
「彼女がいる方が確実さ。黄金の人魚も彼女がいれば、姿を見せるだろう」

それに、私の仲間に監視させるとしても、あのまま教会に置いておくのは危険だ。ラーヌンクルスかフェーリスに渡る可能性がゼロではないからな」
「だったら、手元に置いていた方が安心か。確かにな」
  アルフォンスがうなづく。
「彼女は頑張っているさ」
  シビュラは心の中で付け加える。
(お前について行くためにな)
 しかし、口に出さない。
「アクウィラ火山でも、まあ、・・・・・・役には立たなかったが、あれだけの魔獣を前にして泣き出さなかっただけでも
大したもんさ」
「本人は怖かった、と言っていたけどね」
「私達に協力的な態度は有難い」
 つっけんどんな態度のシビュラに、アルフォンスは言う。
「貴女はエレに甘いね」
  これまでの道中のエレノアへのシビュラの態度から、それはあからさまな優しさではなかったけれども、 思っていたことだ。アクウィラ火山の前に、非常に貴重な転移石を渡してもいた。
「やっぱり、彼女が非戦闘員だからかい?」
「黄金の人魚と話をつけるまでは、重要なお客様だからさ!」
 彼女は投げやりに言った。
「ほら。先頭が何時までも後ろにいるな!」
 話をはぐらかすように、そう言い、開いてしまった前との距離を縮めるべく、シビュラは馬を走らせた。 


  約束の場所に着いたのは、次の日の昼過ぎだった。そこは、切り立った崖の下にある小さな砂浜で、エレノアは手前の海上に聳え立つ巨大で奇怪な岩を指差すと、「あの三つの岩が目印」と言った。
  砂浜の背後の山に陽が落ち始めた頃、暗くなった海の渚に彼女が立つ。夕方が再会の時間ということで。しかし、「ベイレヴラ、ベイレヴラ」と、彼女がその名を何度か呼んでみても、海は打ち寄せる波の音を返すばかりだった。
「そんなに簡単に事が進むとは思っていないさ」とは、シビュラの弁。
「明日、また試せば良い」
 
と、約束の場所から少し離れたところにあった広い砂浜の隅に、野営を張ることになった。
  夕食を終えると、シビュラがアルフォンスに言った。
やはり、フェーリスの動きが気になる。私達は、これから探りを入れてこようと思う」
  シビュラの背後には、忠実な部下、シウェン。
「明日の昼には戻る。くれぐれも、私達のいない間に、無茶な真似はするなよ」
  彼女は強く念を押すと、軽い手荷物だけをしょって、森の中に消えた。


  夜明け前。未だ、空は暗い。
  彼女は予定通り目覚めた。人が起きていない時間に起きるのは慣れっこだ。彼女は音をたてないよう注意をしながら、手際よく身支度を整えた。
  側のティートは?・・・・・・寝てる。
  テントから音もなく這い出て、別のテントに近づく。
  勝手に除くことを躊躇しながらも、時間はそうない、テントの入り口をぺらりと少しだけめくる。中には、寝相の良いビーストテイマーと、空になった寝袋が一つ。
  いない。
  彼女は慌てながら薄暗いテントの中を再び目を凝らして確認し、テントを離れる。どこに行ったのかと、辺りを探し始める。
  探し人は、すぐに見付かった。
  アルフォンスは例の砂浜に、黒い海と向き合って座っていたのだった。
「おはよう」
  エレノアが声をかけた。


「あ、おはよう」
  アルフォンスは、ふと我にかえったように。
「どうしたの?」
「早く目が覚めたから、朝日が出るのを待ってたんだ」
  エレノアが彼の横に座った。どうにも彼は浮かない顔をしている。エレノアの伺う視線に気づいて、アルフォンスは笑った。
「考え事をしてたんだ。以前、話しただろ。騎士団を脱団したこと」
「フェーリスの騎士団でしょう?」
「そう。・・・・・・なんで、やめてしまったのかな、って」
「やめたくなかったの?!」
  血相を変えてエレノアが迫ると、アルフォンスは笑いながら手を振る。
「そうじゃない。騎士団は自分の意思でやめたんだ・・・・・・」
  彼の笑みが消える。
「ただ、脱団するにも、もっとちゃんとした別れ方があったんじゃないかなってさ」
  寂しげな顔をする。
「そんなつもりはなかったのだけど。親友を裏切る形になってしまったんだ」

 顔を海に向けてしまったアルフォンスに。
「仲の良い友達だったの?」
「うん。なんでも言い合えたし、・・・・・・それ以上に、彼には本当に世話になった」
 水平線の辺りがほんのわずかに明るくなってきた夜空に、星がぽつりぽつりと灯っている。
「騎士団の隊長なんだ。彼も聖槍を探している。これから先、彼と剣を交えるかもしれない」
  アルフォンスは平然とした調子で言ったけれども、彼女にも彼の心中が思い遣られた。
「・・・・・・後悔してる?」
「後悔はない。あの時、確かに俺はシビュラの力になりたいと思ったんだ」
「・・・・・・シビュラさんのため・・・・・・?」
  エレノアは小声で尋ねた。
・・・・・・それだけじゃないのかもしれない」
  アルフォンスは考え込みながら言う。
「・・・・・・騎士団以外に自分の道を見つけたから・・・・・・」
  自分自身に問うような口振りだった。
  両足を砂浜に投げ出した。

「ところで、エレは。なんで、こんな朝早くに?」
  アルフォンスが話題を変えた。エレノアは「私は早起きなの」と答える。
「もう旅暮らしは慣れたかい?なかなか、二人きりで話す機会がなかったからさ」
「みんな、良くしてくれているし。・・・・・・楽しい」
  アルフォンスの親しげな笑顔が眩しくて、エレノアは思わず顔をうつむけた。
「そうか。何か困ったことがあったら、すぐに言ってくれよ」
「うん・・・・・・」
  彼女はうつむいて、うなづく。
  アルフォンスの仲間は、皆、優しい。新参者の自分を、まるで昔からの知り合いのように輪の中に入れてくれた。こんな事は始めてだった。
(いつも一人ぼっちで。みんなに嫌われていた私なんかを・・・・・・)
 それに比べて。
 エレノアは自分のしている事が、みんなの優しさを裏切っているような、罪悪感を感じるのだ。
「・・・・・・アルフォンス、ごめんなさい」
  エレノアが呟き、アルフォンスは驚いた顔をする。
「今日、早起きをしたのは、貴方だけに話があったからなの。私、・・・・・・嘘をついてた」

「嘘?」
  彼の訝しげな顔を見たくはなかった。エレノアはすぐに打ち明けた。
「約束の場所は、ここではないの。もう、通り過ぎたの」

  アルフォンスは怒るだろう。
「シビュラさん達を疑っているんじゃないの。ただ、みんなで会う前に、あの人に会っておきたかった。みんなと会ってくれるかどうか、確かめてからにしたかったの」
  顔を伏せたまま、一気に喋りきる。
「じゃあ、俺達に内緒で会いに行こうと?」
「ごめんなさい・・・・・・」
  怖くて、顔が上げられない。
「・・・・・・そうか、・・・・・・そうだよな」
  はあ、と気の抜けた大きな彼の溜息が聞こえた。エレノアは恐る恐る顔を上げる。
「怒らないの?」
「怒るも何も」
  ほおづえをついた彼が振り返る。
「君の気持ちも分かるよ。久しぶりの、大切な人との再会だもんな。大人数で押しかけるなんて、考えたら野暮な話だ。・・・・・・気にしなくていいよ」
  彼のいつも通りの笑みに、彼女は泣きたくなってしまった。

「・・・・・・あの岬が、約束の場所なの」
  彼女は、そう遠くは無い、大きく海にせり出した岬を指差した。
「『真夏の太陽が昇る場所』。夏至の日、ちょうど、あの岬の先端から続く海から、太陽が昇るのよ。そこから呼べば、どこの海にいても、声は届くって」
  砂浜が切れ、磯浜に変わる海岸線。大きな岩が重なり合う所に、飛びぬけてとんがった岬の黒い姿がみえる。
「エレ」
「うん」
「俺に話してもいいの?」
「うん。・・・・・・約束の時間は、朝日が昇る時よ」
  エレノアはアルフォンスに微笑みかける。不安と期待の入り混じった目で。
「・・・・・・アルフォンス。一緒に会いに行ってくれる?」
「ああ。・・・・・・もちろん」

「じゃあ、急ごうか。早くしないと、夜が明けてしまう」
  目の前の空は黒から群青へ。すでに、その色を変えている。
「これから行くつもりだったんだろう」
  アルフォンスは立ち上がり、ズボンに付いた砂をはたいて落とした。
  そして、にやりと。
「ちょうど、シビュラも留守だしな」
  二人は、一旦、テントのある場所に戻ることにした。
「崖を降りてきた道から行けるかな。遠回りになるけど、馬で行った方が速いだろう」
  アルフォンスはエレノアをテントの場所の手前で 待たすと、馬を取りに走る。
  みんなを起こさないように馬が騒ごうとするのをなだめ、慣れた手付きで馬具を取り付けた。
  そして、馬を引っ張っていく途中で、思い当たることがあり立ち止まる。ポケットから紙とペンをだし、万が一のために、イナンナのテントの前に書置きを残した。
  エレノアの元に戻ると彼女を前に乗せて、手綱をとった。

  冷たいけれども心地良い、弱い風が吹いていた。二人が岬に着くと、海と空の境は、鮮やかな色彩に染まっていた。赤、オレンジ、黄色、明るい光。
  もうすぐ、陽が昇る。
  草のない、乾いた地面の上に降りるエレノアに、アルフォンスが手を貸してやる。海を望む彼女の笑顔、亜麻色の髪が風に揺れる。
  岬の先端へと、彼女は跳ねるように駆け出した。その時。
「エレノア」
  反射的に剣の柄を握って、アルフォンスは後ろを振り返った。彼女を呼んだのは、彼ではなかったからだ。
  年をとった男の声。黒い神服を着た男。
  来た道、脇の森の前に、ソレア海岸の神父、ハーウェン神父が立っていた。
「おお。愛しい我が子よ。・・・・・・エレノアや」
 神父は両手を大仰に広げながら、近づいてきた。
(まずい!)
 即座にアルフォンスは辺りを見渡した。岬を囲む森に注意深く目をこらした。夜が明けていない森は暗く静まり返っている。朝の訪れを伝える鳥の鳴き声すらしない。生き物の気配を感じない、それが逆に不気味で。
 彼は身に防具を何もつけていない。あるのは、一振りの剣。一人なら、何とかできようが。
 背後は切り立った断崖。こんな所で、もし、大人数で襲われでもしたら・・・・・・。
 果たして、ハーウェン神父は、たった一人でここまで来たのか。

 エレノアは隠れる場所もない岬の上では詮方なく、元来た道をとぼとぼと引き返してきた。
「ずっと、お前を探していたのだよ。やはり、ここにいたのだね」
「・・・・・・神父様。何故、こちらに?」
「ずっと昔、未だお前が小さい頃だったか、私に話してくれたではないか。・・・・・・お前の大切な人のことを」
 神父は弱者に大いなる慈悲を持って、哀れみの手を差し出すように、目を細めて嬉しそうに語った。
 体を小さくしたエレノアは、遠い昔を思い出した。
 あれは、あそこから抜け出して教会に辿り着いて、少し経った時だ。神父になじられて喧嘩になり、そういうことを言った気もする。私だって一人ぼっちじゃない!私にも待ってくれる人がいる、と。・・・・・・涙ながらに。
(話したくて話したんじゃない・・・・・・)
 さっきとはうって変わって押し黙ったエレノアに、心配そうにアルフォンスが付き添った。

「さあ、帰ろう。愛しいエレノア。私達の家に」
 神父は顔を伏せるエレノアを見下ろした。
「養父である私を裏切り、この男に付いてきた、お前の罪は全て許そう」
 仰いだ天に、指で印を示し、物々しく祈りを捧げる。
「お前は騙されているのだ。可愛い私のエレノア。お前は世間を知らない。・・・・・・この男がソレア海岸に打ち上げられた時、優しいお前は、この男を助けたね。教会に連れて来て、甲斐甲斐しく介抱してやった。・・・・・・私は初めから反対だったのだ。身元も知れぬ男を教会に入れるなど。・・・・・・幼いお前は何も知らない。この男の甘い言葉に誘われてしまった。この男は、お前の清らかで優しい心に付け込んだのだ。笑顔の下に潜む、卑しい企みを見抜けなかったお前を、どうして私が責められるだろうか?」
 優しく穏やかな、神父の説教が終わった。
「エレノア・・・・・・」
 神父が彼女の肩に手を差しのべる。しかし、エレノアは一歩後ろに下がって、その手を拒んだ。
「お養父様。申し訳ありません。・・・・・・大恩ある神父様を裏切ることを、どうかお許しください」
 微笑みを浮かべた神父の顔が一瞬ゆがむ。
「私はもう、二度と教会には戻りません。今までのことは感謝しています。お養父様は、身寄りのない私を、ここまで育ててくださった。その御恩は決して忘れません。けれども、・・・・・・」
 エレノアは顔を上げた。まっすぐ前を見て、力を込めて言った。
「私は彼と行きます。私は彼と共にありたいのです」

 一つ、大きな音が上がり、エレノアの体が横に吹っ飛んだ。彼女はよろめいて、地面に崩れ落ちる。
 神父はエレノアの頬を叩いた右手を、さらに大きく振り上げた。
「やめろ!なんてことするんだ!」
 様子を見守っていたアルフォンスが、すぐに、エレノアの前に入る。
「こんな、・・・・・・暴力をふるうなんて!」
 息を荒げて神父は。
「これは彼女を愛しているからこそなのだよ!私だって手を上げるのは辛い。しかし、彼女のためを思うからこそ・・・」
「力で心を変えるというのか!そんなことは間違ってる!」
 激しい勢いで食ってかかるアルフォンスを、神父は忌々しく睨みつけた。この少年、正義面しおって!
「仰いますね!まさかアナタが、そんな言葉を吐くとは!」
 神父は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「アナタ方が、この島で何をやったか、お忘れか!アナタ方軍人は、いつも、多くの民の小さな意思を力でもって、ねじふせてきたのではないのですか!?」

 神父はアルフォンスの背後に隠されたエレノアに、手を伸ばそうとする。
「邪魔をしないで頂きたい。エレノアを返しなさい!これは私と彼女の問題であって、キミには何の関係もない!」
「貴方にエレは渡せない!」
 アルフォンスはハーウェン神父の前に立ちはだかった。
「彼女は自分の意志でここまで来たんだ。俺も彼女が来ることを望んだ。・・・・・・貴方に、俺達は止められない!」
 急に、森がざわめいた。
 岬で睨みあっていた二人は、事の異変に共に森を振り返った。
 暗闇の森の中から、次々に人が姿を現す。武装した兵士。それは、見覚えのある、懐かしい軍服。フェーリスの聖炎騎士団の。
 剣を抜く、鋭い金属音が静かな岬に響く。騎士達は容赦なく、剣をこちらに突きつけた。
 騎士達の壁ができ、その後ろから、一人の男が前に進み出る。腹心の二人の部下を従え。
 青色のマントをなびかせ、緑色の神官騎士の軍服を纏う。金髪の若い男が前に進み出た。
「そこまでだ、アルフォンス。大人しく、彼女を返してもらおうか」
「レクトール・・・・・・」
 現れたのは、その人だった。




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